イノベーター紹介

パレ・スルジャナがこれまで支援してきた、アーンドラ・プラデシュ州(Andhra Pradesh)のイノベーター達を紹介します。


ボヤ・ペッダ・ラジャナ(Boya Pedda Rajanna)


ペッダ・ラジャナの家は村の家畜のケアにたずさわってきた。
ラジャナは、動物を薬草で治療する方法を、祖父を見て学んだ。

近郊の人々は、家畜の良し悪しの見分け方や健康管理の仕方をラジャナに教わりに来たり、治療のために彼を自分の村へ呼んだりする。
調子のわるい家畜も、彼が薬草を処方するとたいていは2、3日でよくなる。腹痛、背中の凝り、乳房の張りをとったり、折れた脚の骨接ぎもする。眼の治療もする。
謝礼の類いは決して受け取らない(ラジャナは農業で生計を立てている)。
ラジャナの評判は近郊一帯に広がることとなった。
今では獣医がアドバイスを求めに来ることもある。

本業の農業にかける時間が少なく、自身はいつまでも貧しいままだが、ラジャナはこうした治療行為をもう30年も続けている。


ウップヴェラ・クリシュナ(Uppuvella Krishna)


クリシュナは日雇い農民だが、身の回りの色々な不便を、熱心な創意工夫で解決してきた。

彼は、それまで出回っていた台湾製の農薬散布機は正確さと効率の点で改良の余地があることに気づき、遠心式噴霧器を用いて、もっと軽くて性能のよい散布機を作ることに成功した

AP州のタバコ協会で彼が行ったデモは、多くの農民と科学者を驚かせた。
彼のこの発明は第4回(隔年)グラスルーツ・イノベーション・オンペティションでも賞を受けた。

その他にもクリシュナは、改良型圧力釜、用水路の相互接続、庶民向けの風車など多くのアイデアを実現し続けている。


ヴィクラム・ラトッド(Vikram Rathod)


ヴィクラムの祖先はラジャスタンからAP州北部へ移住してきた。
ヴィクラムは小学校に5年までしか行くことができなかった。

彼は4エーカーの土地を持ち、綿花を栽培していた。

あるとき米を植えたが、水不足で田は干上がってしまった。
電気式のディーゼルポンプを買う余裕はなかったので、彼は古い自転車を持ってきて、それを何個もの滑車とベルトでモーターに繋いだ。
ペダル式汲み上げ機が完成した。

この発明は地域に大きな恩恵をもたらし、ヴィクラムは2003年にインドの大統領から表彰を受けることとなった。


G・チャンドラ・シェカール(G. Chandra Shekar)


チャンドラシェカールは人や家畜が蚊に悩まされずに済まないものかと常々考えていた。
自然の中に答があるに違いないと信じた彼は、村の若い有志を組織し、防蚊効果のある植物を求めて3年間森林探索を続けた。

チャンドラシェカールはクサトケイソウ(Tella Jumki, Passiflora Foetida)の毒性に注目し、その葉のエキスを蚊とその幼虫に用いてみた。
効果は劇的だった。
抽出プロセスに環境負荷がなく、地産地消型である点もよい。

この薬はSRISTI(持続可能な技術と制度へ向けた研究と構想のための協会)の研究所で検証を受け、特許の取得を進めている。
彼はこの発見のについてのデモをNAARM(国立農業研究経営所)とNIF(国立イノベーション基金)で行った。
現在この発見は、インキュベーションの段階にあり、起業家による製品化/マーケティングを待っている。

チャンドラシェカールはこの他にも多くの植物を調査し、農薬、殺虫剤、髪染め、痛み止め、火傷薬、金属除去など、様々な用途に活用してきた。


K・リンガ・ブラフマン(K. Linga Brahmam)


リンガ・ブラフマンは小さな村の出身で、高等教育は受けていないが、独創的な人物だ。
一家は銅器の製造で生計を立ててきたが、近年はプラスチック製品に押されて銅器がめっきり売れなくなってきている。

ある時彼は、アイロンをガスストーブで温めているところに遭遇した。村では電力供給が安定することはほとんどない。
彼はそこでアイロンとストーブをくっ付けてしまうことを思いつき、その1年後、ガスの火ですぐに高温になる合金を完成させた。
彼が開発した、LPガスで加熱する8.5kgのアイロンは、従来の電気式や石炭式よりも安価で扱いやすく、洗濯屋たちの歓迎を受けた(1時間のアイロンがけに要するガスの量は10g)。
この発明は特許出願中で、起業家によるマーケティングも進行している。

NIFHoney Beeは彼に過去3年に渡り助言を行っている。


スリ・キシャン・パワル(Sri Kishan Pawar)


パワルは観察眼と創意工夫に優れた教師だ。
彼は現在インドで普及しているトイレが、妊娠中の女性や高齢者、肥満やヒザ痛のある人たちには使いづらいものだということに気づいた。
彼は便器を改造し、誰にでも快適に使えるようなものにした。
この特許は現在出願中だ。

彼はまた、子供たちが学校へ大量の重い教科書を運ばないでいいように、リング式テキストブックを考案した。
各教科の教科書のうち、その時々必要な部分と、白紙(ノート)を綴じて学校に持参することができ、内容は毎日差し替えることが可能だ。

他にも、ハーブのフェイスパックを作ったこともある。
現在は、ダムや貯水池の水門開放により大量の水が放出される際に、下流の村々に自動で知らせる警報の開発に取り組んでいる。

彼はHoney Beeのアンドラ・プラデシュ州における熱心な協力者であり、広く州内各地を訪ね、多くのグラスルーツ・イノベーションを探し出してきた。


(随時追加予定です)